

2007年6月、東京都内で開催された公開フォーラムで、自民党の幹部が、「がん患者が当事者意識をもってがん政策作りに参加しており注目してほしい。民主主義の新しい実験ともいえる」と語った。
4月に施行された「がん対策基本法」は、がん患者や家族・遺族などの患者関係者を複数含む「がん対策推進協議会」が、がん対策のマスタープランとなる「がん対策推進基本計画」を検討すると決めている。協議会において患者委員の意見によって計画の内容が一歩も二歩も進んだ。医療提供者も行政の立場のものも、がん対策が強化しやすくなった。先の発言は、この協議会における患者委員の活躍を評価してのものだ。
がん対策を大きく前進させる基本法だが、一夜にしてできたのではない。第1段階は、2005年5月ごろから繰り広げられたがん患者団体による自民党、公明党、民主党などのキーパーソンへのロビイングだ。このころ、がん対策法というメニューが各党の幹部に認識された。こうしたロビイングは、2003年ごろからしばしば行われるようになっていた、患者から国会議員への訴えの流れを受けていた。
第2段階は、2006年3月ごろに明確になった議員立法の動きだ。患者の願いを受け、各政党がしかけた。第3段階は、法律成立(6月16日)に至る最終局面。自民党の議連もできた。がんを告白した議員の国会質問で、国会内の機運は高まった。ぎりぎりの調整のうえ、超党派的に全会一致で成立した。付帯決議の内容に、患者も意見を出した。
患者の声を契機に法律が成立し、患者が基本計画をより良くし、その結果、議員、行政担当者、医療供給者、患者など、すべての立場にメリットが及ぶ構図ができた。そして、「がん医療が変われば、日本の医療が変わる」が合言葉になってきた。
がんで起こった新しい政策形成プロセスが他の疾患領域に広がっていけば、患者ひいては広く国民にメリットがある。がん対策基本法成立までの道のりをたどることは、すべての疾患に関心がある人にとって、大いに意義があるに違いない。
(市民医療協議会 共同議長 埴岡 健一)